堂島リバービエンナーレ2011
「ECOSOPHIA - アートと建築」
大阪の中心部を流れる堂島川を望む堂島リバーフォーラムにて、今年で第二回目となる堂島リバービエンナーレ2011が現在開催されているので、取材に行ってきた。
今回の題目となる「ECOSOPHIA(エコソフィア) 」とは、エコの哲学を実践する惑星という意味が含められており、これからの地球のあり方を、建築とアートというテーマのもとに自然環境、社会環境、人間の心理の3方向から考察するというのがECOSOPHIAのコンセプトになっている。アーティスティック・ディレクターは、飯田高誉氏(青森県立美術館チーフ・キュレーター)。
会場が地圏( 楽園の象徴 )、水圏(生命体の象徴)、気圏(天地創造と精神の象徴)に分かれ、それぞれの圏を絵画・マケット(模型)・映像・立体作品によって表現されていた。宇宙空間を想像させるような薄暗い空間に、あるべきであろう人間の理想と現実のギャップが浮き彫りにされた展示アート作品たちが存在しており、それぞれから私たちに向かって様々な警告(アラーム)が鳴らされていた。
地圏は、 楽園の象徴であり、都市・森や砂漠が表現されている。「理想宮」「理想島」「理想国家」(石井七歩)は疑街化された人と擬人化された街を少女を細密画で描くことによって表現されている。この少女は日本という島国に例えられており、また悲しくもその頼りなさを表している。樹海を偏光パールで描かれた点描画の「FOREST#1」(大庭大介)は、光の角度により自然のユートピアとその間逆である恐怖を表現する。関東大震災後の避難地域の4月20日現在を映し出した映像作品(新津保建秀、渋谷慶一郎、浅子佳英)は、映像とそれを見ている私たちを見事に融合させている。
水圏は、生命体の象徴である、海・川・地が作品の主軸となっている。まず、展示会場の外で私たちを出迎えてくれるのが、「Exform」(池田剛介・原口啓・三木慶悟)である。頭上7メートルの高さから、シナベニアの上に落下する水滴。ベニアの上に光に反射して光る水滴もまた、大地に還っていく生命体(人間)を表しているようであった。「百年海図巻 アニメーションのジオラマ」(チームラボ)も、見ものだ。WWW(世界自然保護基金)による"今世紀末までに地球の海面は最大120cm上昇する"という予測発表をアニメーションにより映像化した作品である。金色の波が次第に島を飲み込んでいく様...。まさに未来の地球の姿なのであろうか。
今回の目玉作品である「ホワイトホール」(森万理子・隅研吾)が展示されているスフィア・気圏は、天地創造と精神の象徴である、大気・宇宙を作品化している。アインシュタイン方程式による、ブラックホールにより崩壊した星を再生させる「ホワイトホール」をに注目し、環境問題と対応させることに成功している。洞窟のような建造物の素材は、99%空気を含ませた、限りなく非物質に近い素材でできている。また、2001年度ターナー賞を受賞した作品「The lights going on and off」(マーティン・クリード)もこの圏で見られる。広々とした空間にただついたり、消えたりする照明。シンプルなこの作品は、全ての物体・生命の生と死をも連想させる。
音響は坂本龍一が担当。かすかに流れるピアノのメロディに、遠くの方から少しずつ不安を誘う音が混ざってくる。その音が次第に大きくなり、ピアノのか弱い旋律が聞こえなくなる。一歩一歩あゆみ寄ってくるひずみの音。まさに現実に侵食する悪夢を表現していた。
日本独特の根拠のない安全神話。デジタル化による視覚異常に慣れてしまった私たちが、現実に非現実が存在することに対する感覚の麻痺。情報を正確に伝えるツールである言葉が、イメージ優先の単語の連続により、意味をきちんと伝える力をなくしている現実。
特に現代アートの巨匠アニッシュ・カプーアによる作品が、目をひいた。彼の建築マケットには、自然には存在するはずのない築物を、何の疑問もなく観光している人間の図が空虚感と共に作り出されていた。
「地球からの危険信号に気づいていますか。」
今年3月11日の関東大震災によって、その危険信号をより身近に感じたはずである。私たちはもっと地球規模で環境問題を考えていかなければならないと考えされられた。3月11日以降、大きく変わったものがある。元には戻れない、麻痺している場合ではないのだ。そのことを強く訴えられた気がした展示会であった。
日本にとって大きな節目となった2011年。日本人はもとより自然との対峙ではなく、共生を目指していたとコンセプトにもあるが、現在の日本はどうだろうか。もう一度、地球と私たち自身に目を向けるために堂島リバービエンナーレ2011に足を運んでみてはいかがだろうか。
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