「ね」ぇねぇ
おじいさん、おしえて。
世の中に、変わらないものってあるの?
ーないんだよ。サリー。
夏に鳴いていた蝉が、秋にはいなくなってしまうように。コップが割れて壊れてしまうように。
去年から来年になるように、移り変わっていくんだよ。
ねぇねぇ
おじいさん、おしえて。
私も変わっちゃうの? 私じゃなくなっちゃうの?
ーそうだよ。
サリーはサリーのままだけど、どんどん形はかわっていくんだよ。
赤ちゃんのときに着ていた服が着れなくなるように。
植物が種から花が咲いて、散ってしまうようにね。
ねぇねぇ
おじいさん、おしえて。
じゃあいつかおじいさんも、変わってしまうの?
ーそうだね。
おじいさんもだいぶ変わってきて、いまこんな風貌さ。
もうこんなに白髪だらけだから、サリーと一緒にいられる時間もあと少しかもしれないね。
いやだ。
おじいさん、おしえて。
わたし、おじいさんがいなくなったら嫌だ。もう会えなくなっちゃうの?
ーああ、それだけはNOだよ。
おじいさんがいなくなっても、サリーへの想いはそのままさ。愛っていうものは、形がなくても心に生き続けるんだよ。
唯一変わらないものだよ。
だから大丈夫。いつでも会える。
ああ、サリー、愛してるよ。