自分のにおいってわからないけど、
ふとしたときに、感じる時がある。
それは自分ではない、におい。
自分ではないものがそこにある証拠。
時にそれは、違和感であり、
とても、居心地のよいものであったり。
もらいもののにおい。
もらった瞬間に、自分のものになったはずなんだけど、数日間は元の持ち主のにおい。
ふと気づいて、嗅いでみたらもう無感覚。
自分のものになってしまった、少し寂しさ。
待ち合わせのにおい。
走ってきた人が立ち止まった瞬間に、ふわっと漂ってくるにおい。
一瞬の、喜び。
待っててよかったと思える、このにおい。
借りた本のにおい。
図書館で借りた本は、"図書館のにおい"がするから、つまらない。
ひとに借りた本。
読み終わった感動と一緒に、わたしのにおいも染み付くんだろうな。
わざと長い間、返さなかったりして、悪い子。
返した後は、なんだかいつもと違うにおいがするぞって、きづいてくれる?
化粧品のにおい。
子供のころは、お母さんの鏡台の香水が強烈に感じた。
嫌だなと思ってた。
でも風邪をひいたときに、ずっとそばにいてくれるお母さんは、うそものの香水のにおいじゃなかった。
つらいときに助けてくれる、頼りになるにおい。
それはお母さんのしるしのにおい。
一番すきなにおいは、ずっとそばにあってほしい。
不安なとき、うれしいとき、つらいとき、たのしいとき。
ああ一人じゃないんだな、って感じられるから。
もう二度と出合えないにおいもある。
大事だったのに、消えてしまったにおいもある。
賞味期限も消費期限もないのに。
においは、そういう意味でもむずかしい。
だいすきな、におい。
きっといつか全て、懐かしいなと思えるようになるんだろう。
わたしのにおいも覚えていてね。